こんにちは。ポップジャパンの石川です。またしてもアイスクリーム2つ持ちで失礼します。暑い日が続きますね。
今回、のぼりラボ取材班は「広島市中央卸売市場」の中で商店が集まる「関連棟(かんれんとう)」にやってきました。
前回取材させていただいた「一般社団法人もみのき会」が運営する「もみの木保育園」も、この市場の関連棟の中にあり、その他にも食堂や歯医者、和菓子屋なども軒を連ねています。
そして、広島市内でもあまり知られていないのですが、この広島市中央市場の関連棟は市場の関係者ではない一般の人でも利用することが可能です。
実際に市場周辺の企業からお昼ごはんを食べに人が来ることもあるそうなのですが、その事実はまだまだ広くは知らていない様子。
今回は広島市中央卸売市場で商売をされている2つのお店でお話を聞きました。
参考リンク
「紅清月(べにせいげつ)」 – 市場と共に歩んだ和菓子屋の歴史
1軒目は、和菓子の製造と販売をされている「紅清月(べにせいげつ)」。
市場関係者向けと思われる食事処や日用品のお店が多い中で、和菓子を扱うお店に一味違う雰囲気と、温かな装飾が目を惹きます。
市場が現在の場所に建てられた当初からお店を構えられている老舗で、お店の歴史とこれからの展望について。
強烈な個性を放つ美人姉妹「大崎照子(おおさきてるこ)さん」「前田時子(まえだときこ)さん」、そして絶妙なサポート役である「古賀郁子(こがいくこ)さん」に聞きました。
市場の中に「和菓子のお店」とは、ちょっと珍しい気がします。こちらにお店を構えられたきっかけからお聞かせ下さい。
お店自体は私の祖父の代からやっています。当時は「清月堂(せいげつどう)」という名前でした。今の場所に市場ができるというタイミングで、この場所に入りました。「紅清月(べにせいげつ)」という名前になったのは父の代からですね。年月でいうと、中央市場の移転が昭和57年だから、もう、ここで35年続けています。
因みに「紅」の一文字が入ったことには、何か特別な思いがあったのでしょうか?
それは私の父に秘密があるようでして…
ほぅ、秘密ですか!?
父が女好きだったからと聞いてます(笑)
えぇ…と、つまり、「紅一点」の「紅」。女性を表す意味で「紅」の一文字を付け加えられたということなのですね。
そうです。
なるほど。意外でした(笑)
だけど今、広島市中央市場の建て替えを10年計画で進めていますが、私達がこの先お店を10年続けることは難しいですからね。歴史をまとめてもらっても、近く無くなるお店なんです。だから取材とかしなくていいから、休んでいって下さい。コーヒーでも出しましょう。
非常にソフトタッチな優しい取材拒否をされました。ありがとうございます。
アイスコーヒーをいただきました。
仕切り直して・・・
広島市中央卸売市場で30年以上商売をされているそうですが、市場の中で和菓子屋さんをされるということも珍しいように感じます。こちらは、どのような方に向けて営業されているのでしょうか?
ここのお菓子は元々「料理菓子」、仕出屋さんのものなんです。だから始めは店頭売りはしていませんでした。だけど、そこへ「1つ、2つ売ってほしい」とか「分けてもらえませんか」というお話があって、今のかたちになりました。
本物と見間違えそうなほど繊細な仕上がり
綺麗なお菓子が入る仕出しとなると、結婚式などブライダル関係のお仕事も多かったのではないでしょうか?
色々なところに行きましたよ。ブライダルフェアにも出ていました。だけど、ずっと立っていることも辛くなってくるし、他のブースに若い人たちが沢山居るのを見ていると恥ずかしくなってきて、やめてしまいました。
ブライダルフェアにまで参加されていたとは驚きです。
人と人のつながりで続く市場の中だからこその商売。
お店の外にあるのぼりや張り紙、入り口の装飾などは、こちらでデザインされているのですか?
私が描いています。「お暇ならきてよね♪」とか「帰りに寄ってね。待ってるよ♪」なんてメッセージがあるんですよ。パッケージも自分で書いているんです。
本当にクオリティが高いですね!今風と言うか最近のトレンドにも通用するデザインです。
大崎さん手書きの作品。可愛い。
市場の中でお店を構えることで、他の地域と違うなと感じる部分はありますか?
市場の中に一般の人が入って来づらいという声はよく聞きます。「入れるって知らなかった!」という人がたくさんいます。
確かに僕たちも最近まで、関係者以外でも入れるとは知りませんでした。やはり、市場外のお客さんの数は少ないのですか?
そんなに多くはないですね。
サラリーマンの方がご飯を食べに食堂に来て、そのついでにデザートとしてウチに来てくれるといった感じですね。
市場というと、やはり朝が早いと思います。紅清月さんも朝早くから営業されているのでしょうか?
朝は5時から開けています。だけど市場で5時というのは遅い方ですね。仕出し屋さんやお魚屋さんはもっと早くから開いていますよ。そういった人たちの中には遠くから来ている人もいます。私なんて、たった5分か10分くらいで来られる距離なんですけどね(笑)
広島の中とはいえ、遠方から来られる方が多いのですね。
市内よりも郡部のお客様の方が多いですね。だけど段々年齢が高くなるにつれて、商売をやめられたお客さんは何軒もあります。
寂しい話ですよ。
なので、この取材の効果でお客さんがいっぱい来てくれたらいいなって期待していますよ!
分かりました!しっかりPRさせていただきます!!
賑わいを呼び込むために必要なのは、広島の市場としての「特色」
これから市場が建て替えられるに向けて、この先、市場や関連棟などがどのような形になればいいなという展望はございますか?
やっぱり東京の築地ように、外から観光客を呼べたらいいですね。今の市場には特色が無いですから。旅行客の方がたまたま来ることもあるんですよ。「広島の市場!」と思って。リュック背負った人が来て「ここでお魚買えますか?」とか「美味しいお魚のお店ありますか?」とか訊かれるんですけど、ここにはそういったお店がありませんからね。
以前、市場で取り扱っている鮮魚、青果、花き(かき)について、関連棟で商売できない決まりがあると聞きましたが、その影響もあるのでしょうね。
だから、市場の人たちが食事するところはあるけど、観光客の人達が来て食べる場所というふうにはなってないんです。フェンスを取り払ってしまおうといった話もありましたけど、やっぱり色々な意見がありますから、難しいですね。
僕も実際に関連棟の中の食堂で、食事をさせていただいたのですが、本当に安くて美味しいものばかりでした。そういった魅力が伝わり、さらに市場の外からでも気軽に立ち寄れる場所になるといいですね。
例えば下関の唐戸市場のように、「市場を目的に行ってみようかな」って思われるようになればいいですね。
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紅清月で元気にお話くださった大崎さん、前田さん。そして作業を続けながら温かな相槌をくださる古賀さんも、自身のお歳を気にされながら、市場が建て変わる頃には商売をやめているだろうと仰っていました。
しかし、未来の市場が関連棟もふくめていかに賑わうかは、どれだけ人を呼び込めるかということだと真剣に考えていらっしゃいます。
紅清月のお店が持つ暖かく楽しげな雰囲気、その演出として大崎さんの心のこもった装飾が大きな役割をはたしていました。
ご協力ありがとうございました。
麺一(めんいち)」市場の中で異彩を放つ!黒田一色のラーメン店
広島市中央卸売市場の関連棟取材。2軒目はこちらです。
お分かりいただけると思いますが、まさにカープ一色、いや、黒田一色です!
関連棟でも異彩を放つこちらのお店「麺一」は、一般の人が入りにくい市場の中という環境にも関わらず、その話題性によってお客様の9割は市場外からなのだとか。
オーナーである「田中一磨(たなかかずま)さん」に集客の秘訣と、黒田愛についてお聞きしました。
麺一というお店が市場の中にお店を開かれたきっかけからお聞かせください。
元々は佐伯区の五日市で色々な商売をしていた時に市場の方から声がかかりました。「ラーメン屋が無いよ」って。そこで一昨年(2015年)の7月に見に来たんです。ちょうど2年ですね。あとは黒田選手関連で色々とテレビで取り上げてもらって、自然とお客さんに来てもらえるようになりました。
お客さんの層は、やはりカープファン、黒田ファンの方が多いですか?
うちは90%が市場の外からのお客さんですね。昼は座れないほど来ていただいでます。サラリーマンの方が多いですよ。市場がお休みの水曜日はうちだけお店を開けるんですが、その時はずっと満席です。その状態を見て入れないと思ったお客さんは並ばずに別のところに行きますね。みなさん時間が無いから。1分も待たないですね。おもしろいところだと思います。
マスコミと口コミの力、どちらも活かす話題作り
店内を埋め尽くし、お店の外にまで飛び出している黒田グッズの数々による話題性も大きいのではないでしょうか?
黒田グッズに関しては日本一らしいですよ(笑) 東京のテレビが取材に来たこともありましたし、北海道からも取材がきました。うちも以前は広告を撒いたりしていましたけど、いまはテレビの影響が大きいですね。タクシーでいらっしゃるお客さんもいましたね。「やっと来ることができた」と言って。うちは黒田一色ですからね。
やはりテレビを始めとしたマスコミの効果は大きいものでしょうか?
放送された次の日などは100人くらいはお客さんが来てくださいますから、やっぱりマスコミの力はすごいなと思いますね。なので、うちの場合は「のぼり」とかが要らないんです。ここで食事された方がリピーターになって、他のお客さんを連れてきてくださったりしますから。安いですしね。
マスコミの力と口コミの力という訳ですね。カープというチームの括りでお店や売場づくりをされているところは多くありますが、「黒田」という選手個人にここまでピンポイントでフォーカスしたお店は珍しいです。まさに聖地ですね。
初めてのお客様は写真を撮られますね。のれんまで黒田にした店なんて無いでしょう?
僕達ものれんを多く手がけていますが、見たことありません!
黒田のれん…
どうせやるなら、とことんやらないと!この金魚も赤ヘル軍団なんですよ。
あ、すごい!本当だ!なかなかこのサイズでこの色の金魚は珍しいですよね。
まぁ、いないですね。長野県の有名な金魚の産地から手に入れました。一匹だけ色違いも居ます。これがエルドレッド選手ですね。
助っ人外国人まで!(笑)
そんな遊びもしています(笑)
賑やかな市場を実現するために「開かれた市場」をアピール
広島市中央市場も今後10年計画で建て替えると聞いています。麺一さんとして、今後はどのような展開を期待しますか?
これからは、外からのお客さんも多く入れるようにするそうですけど、そのPRにはもっと力を入れるべきだと思います。知名度が高くなって、一般の人たちに知ってほしいですよね。やっぱり広島の台所ですからね。
現状だと、多くの人が「入っていいのかな?」と思っているみたいですね。ここに市場がある事自体、知らない人も居そうです。
そんな「外から入りにくい」イメージの市場内にあって、麺一さんのお客さんの90%が外部のお客さんというのも凄い話だと思いますが、それもやはり黒田に特化したという突破力だと思います。
うちに来ること目的で、市場に初めて入ったという人も多いですよ。、最近ではフェイスブックとかSNSで知って来る人も多いですね。インターネットで広島のラーメン情報をチェックする人もたくさんいるみたいです。
今後、麺一ではどのようなお店を目指されますか?
一先ずは、黒田監督を待ちわびてこのスタイルを貫きます。カープ黄金期を支える姿を見て、感動するという感じですね。若い世代の選手も育って、いい年代になると思いますよ。
黒田監督の就任、そして優勝した際にはまた「特別メニュー」が生まれるというわけですね。
もちろんです!必ずやります!やりまくります!!
わかりました!その時にはまた取材させていただきます!
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お店の外にまで溢れ出す黒田愛によって、麺一の認知は市場の外にまで広がっており、「市場に一般人が入りにくい」という状況にも関わらず、外部からの集客に成功していました。
店舗の魅力を表現するための装飾ではなく、店舗装飾そのものを魅力としてしまう逆転の発想によって、多方面からの注目を集め、またオーナーの田中さんは、麺一が注目されることで市場の認知が広がればいいのではと語られていました。
広島市中央卸売市場は駐車場のキャパシティだけでも2000台以上。
今回取材させていただいた「紅清月」と「麺一」以外にも美味しくて特徴的なお店が関連棟にはいくつも並んでいます。
市場の中に人を呼び込み、活気を呼び込むこと。広島の台所として私達の生活を支える市場がもっと身近な存在となるために何が出来るのか。
のぼりラボも引き続き考えたいと思います。
ご協力いただき、本当にありがとうございました。
【取材協力】
◆紅清月
広島県広島市西区草津港1-8-1
Tel.082-279-2708
◆麺一 本店
広島県広島市西区草津港1-8-1
Tel.082-279-2220
ご協力いただき、ありがとうございました。
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