ポップジャパンは布印刷のメーカーとして、日々さまざまな商品を製造しています。
のぼり旗や横断幕、そして暖簾(のれん)もその一つです。
『のれん』の本来の役目は目隠しです。
多くはお店の入り口に設置して、中の様子を見えにくくしています。
設置する理由は様々で、お客様のプライバシーを守る意味もあれば、日差しや風が入ってくることを防ぐねらいもあります。
また、のれんが出ているかどうかで『営業中』がそうでないかをお知らせする役目もありますね。
このように『のれん』は単なる目隠しだけではなく、お店の看板や演出としての効果が期待されています。
そこで今回ののぼりラボでは、そんな『のれん』に注目して店舗装飾としての魅力を3つのポイントで掘り下げてみたいと思います。
のれんがあるとお店に入るハードルが下がる。
のれんは目隠しだから
と言うとお店に入る障害となりそうなものですが、実際はその逆。
「のれんがあるから入りやすい」という心理も実は存在します。
その理由のひとつは『のれんの有る無し』が、『営業中と準備中を見分けるポイント』になっていること。
「営業中は店頭にのれんをだして、閉店時(準備時間)はのれんを片付ける」というのは、ワリと一般的でポピュラーな光景です。
この習慣によってお客さんは「準備中のお店に入ってしまって気まずかった」という自体を回避できます。
つまりのれんは、お店の状態を示す広告として安心感を提供しているのです。
またお店にとっても、気持ちよくお客様をお迎えする施策としてのれんは効果的です。
お店のイメージや特徴を発信するために外観を演出するとき、活躍するのは看板やのぼりなどの屋外広告です。
そこで興味をひかれたお客さんにとって、一番気になるのはやっぱり店内の様子。
たとえばランチタイムの飲食店では、店内がどれだけ混んでいるか気になるものです。
しかしそうは言っても、お店の中をしっかり見てもらえるような(例えば全面ガラス貼りにするような)工夫をするワケにはいきません。
誰だって食事中の姿を他人からジロジロ見られたくないですからね。
店外のお客さんからは中を確認してもらいたい。でも店内のお客さんのプライバシーは守らなきゃいけない。
そんな時に有効なのが『のれん』です。
普段は目隠し。だけどめくって中を覗けなくもない。
そこに「中の様子を知りたい」「外から伺い知られたくない」という立場によって変化する、日本人の微妙な心理を柔らかく包み込む効果がのれんが登場。
特に日本人は「察し」と「思いやり」が度々求められ、良くも悪くも『曖昧な立ち位置であること』が正解ということもよくあります。
『自分は知りたいけど他人には知られたくない』なんてわがままな話ですが、そこを調整するアイテムとして、のれんは実に絶妙に境界線を柔らかく曖昧にしています。
お店の外も中も、お互いにあまり気にすることなく絶妙な距離感が保てるツール『のれん』は実に日本人のメンタリティにあった装飾なのです。
のれんの柔らかさで演出する「歓迎」の心。
のれんの歴史について少しだけ紹介します。
のれんの起源は平安時代の末期。
当時からお店の中に日差しや風が入り込むことを防止する目的で設置されていました。
やがて時代の流れの中、のれんは実用品から屋外広告と店舗装飾的の立ち位置となります。
日本の文化と共に、半暖簾、長暖簾、水引暖簾といった様々な種類へと枝分かれしながら歴史を持つ立派な集客アイテムとして進化してきました。
日差しや風を「入り込ませない」というスタートだったものが、今では「歓迎」を演出する店舗装飾としてとして進化してきた歴史は興味深いですね。
例えば温泉や銭湯にかけてある「男湯」「女湯」ののれん。
もちろん中の様子が見えないようにする役割が一番ですが、一目瞭然ののれんによって間違った方に入るという不幸な事故を防止する役割もあります。
しかし同時にのれんが出ているお店には「ようこそ、お待ちしておりました」という意味があります。
のれんを出すことによって「準備が整い営業をはじめました。いつでもお越しください」というメッセージが発信されているのです。
お店の状態を明確にお知らせするのれんは、店舗装飾としてリアルタイムで情報を発信するツールとして機能しているのです。
風水に効く暖簾で邪気を払おう。
のれんの実用的な効果について説明してきましたが、実は風水的にものれんは効果が高いと言われています。
風水では「化殺(かさつ)」という考え方があり、環境から出るマイナスのエネルギーに対して、伝統的な手法の風水アイテムを使うことでマイナスエネルギーを軽減・緩和するというものです。
例えば、部屋の入り口から真正面にベッドがあるとします。
これは入り口から入ってくる「気」をベッドで寝ている間、ダイレクトに受けてしまうので良くありません。
しかし住宅事情によっては、レイアウトを変えることすら難しいこともあるでしょう。
そこで登場するのがのれんです。
のれんには空間を遮断する効果があり、外からの良くない『気』も遮断します。
こののれんによる『化殺(かさつ)』効果によって、邪気を防ぐことができるのす。
風水を信じるかどうかは人によりますが、かつては江戸の街も風水の理論で創られたそうです。
気休めかも知れませんが、お洒落なのれんをお守りとして部屋にかけて気持ちが上向くなんてこともあるのではないでしょうか。
のれんはとても日本人的な装飾。
のれんは装飾や広告としてだけではなく、観光地のお土産屋さんにもご当地のれんが売ってあります。
ご家庭でもキッチンとの仕切りにレース地ののれんをかけていたりします。
境界線をきっちりと分かりやすく明確に区切ることも大切ですが、緩衝材的なアイテムがでゆるく区切ることも心のゆとりです。
布という素材で演出される柔らかさを活かすのれんにはそのようなクッションとしての効果が期待できます。
見えないけど、見えなくもない。
区切ってるけど、ハッキリとしていない。
日本人ぽい「はっきりしなさ」ですが、それも裏を返せば「和を以て貴しとなす」気遣いの精神。
それはのれんと共に歴史を歩んできた日本人独特の心理かも知れません。
つまり、のれんは日本独特であると同時に日本人の心に訴えるために特化した装飾品なのです。
街でのれんを見かけた時にそんな特徴を思い出してみてください。
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