行きたい ! 立てたい !「のぼり」隊!第二回 「大野瀬戸かき海道」を五感で味わう黄金体験の巻

島田水産

広島県は全国有数のかき産地。
中でも、廿日市市大野地区には、広島県内トップクラスの生産地であり、「大野瀬戸かき海道」というブランド名が設定されています。
しかし「のぼりラボ編集長の石川」は、つい先日までその名称を知らず、周りのスタッフに聞いてみても、あまり認知が広がっていませんでした。

しかし、存在を知ってしまったからには、気になって仕方ないのが「かき大好き男・石川」。
「大野瀬戸かき海道」について、突撃現地調査を行ったのが前回の記事です。

参考記事
  1. 行きたい ! 立てたい !「のぼり」隊!第一回「大野瀬戸かき海道」の巻

結果として「もっと魅力のアピールがされていればいいのに」という、少し勿体無さえ覚える感想に。
今回は、そんな「大野瀬戸かき海道」に設定されている地域の中で、実際にかきを生産し販売、そしてお食事を提供されている店舗へと、実際に取材をお願いしてきました。
そこで知った屋外広告の必要性と果たすべき役割、そして広島かきの現状、生産者としての想いについて紹介します。

根強いリピーターを獲得する秘密は、全てを知ってもらう工夫と努力にあり。

取材先の第一弾。JR宮島口駅から徒歩12分ほどの場所にある「島田水産」にお邪魔しました。
受け継がれるかき作りの伝統と、絶大な人気を誇る一風変わった「かき小屋」。
なによりも「広島かきについて知ってもらいたい!」という熱い想いを聞かせていただきました。

島田水産

島田水産はメインストリートである国道2号線から、海側へ少しだけ奥に入った所にあります。
広島方面からだと、店舗の屋根に設置された大きな看板と電柱看板の表示を目印に、逆方面である岩国側からだと、国道2号線沿いにある駐車場ののぼりや看板が目に入りやすいでしょう。

ただし、周囲には、別のかき業者の目に付きやすい看板もあり、のぼりを多く出しているラーメン店もあって、視覚情報が多くある環境です。
他の情報に目線が誘導されることで、島田水産を見逃してしまう可能性があります。
取材の中で「島田水産を目的地として来られるお客様」は大変多いと知り、我々もその実感を得ました。
しかし、同時に他店舗の情報に埋もれない屋外広告による誘導や、案内効果を発揮する必要性も残っているように感じました。
特に、交通量の多い国道からお客様が来ることを考えると、分かりやすくスムーズな交通誘導は安全と安心の確保に繋がることでしょう。

島田水産

島田水産

島田水産のかき生産の歴史は、約300年前までルーツを遡ることができるそうです。
近年まではかきの生産と販売を行っていたそうですが、ある時期に寒さ対策としてドラム缶で火をたいていたら、「ちょっと、かき焼いてもいい?」という問いかけがお客様からあったのだとか。
断る理由も無く、「どうぞどうぞ」と言っていたら、続々とかき焼く人々が増えてきたそうです。すると「テーブルが欲しいなぁ」とか「屋根もいるよね」といった話の流れに。
話が徐々に大きくなった結果、現在の「かき小屋」の形が完成。
今では「かきシーズン」ともなれば、たくさんのお客様で賑わう場となりました。

島田水産

取材させていただいた日は、平日の午前11時頃だったのですが、既にかき小屋内には多くのお客様が入り、思い思いにかきを焼いておられました。その人気が否応なく実感できます。

しかし、今回取材に対応いただいた三宅將(まさる)さんによれば「今日はまだ少ない方」とか。ピークの時だと、一日で500人のお客様が来店され、用意していたかきが全て無くなってしまうこともあるそうです。

三宅さん

三宅さん「最近は外国からのお客様も多いですね。特に香港の人気が今すごくて、香港からのツアーが毎週入っています。一本のツアーで30~40人単位の団体になります」

一度来店いただき、島田水産のかきを食べてもらえば、その魅力によるリピーターが後を絶たないことも、特徴の一つだと三宅さんは語ります。
そんな人々を魅了する秘密は果たしてどこにあるのでしょうか。

三宅さん「かきの作り方や技術は様々で、かき生産業者によって味が全然違います。似たような味と思われるかも知れないけど、身の入り方から何から全然違う。1ヶ月ごとに味も変わりますし、いかだが変わってもやっぱり味は変わります。その工程全部に関わっているので、我々は常にかきの状態が把握できているから、お客様に正しい説明ができるんです」

島田水産

三宅さん「「今は身が悪いです。ごめんなさい」とか「今、いい感じですよ」とか、嘘をつかずに本当のことが言えるから、お客様も安心できますよね。100%じゃないものを「100%です」って言う方が間違いですからね。商売としては、その辺りが下手なのかも知れないですけど(笑)」

お客様との距離が近いからこそ、間違いのない様々なかきの情報提供が実現できる。
その信頼関係こそが、リピーターを増やし続ける秘訣なのでしょう。
見渡せば、かき小屋自体も気取らない雰囲気。
手書きのメニューや注意書きにも、養殖場から焼き網にまで繋がるストーリーが削られることなく届けられるライブ感があります。
「ボロ小屋なんですが」と自嘲気味に笑う三宅さんですが、実はこの小屋自体に秘められたエピソードに我々は驚かされてしまいました。

三宅さん実はこの小屋、我々の手作りなんですよ。シーズン前に組み建て、夏になると全部解体して、ここは資材置き場になります。普通は2週間くらいで建てますが、急げば1週間で楽勝ですね」

島田水産

この規模の小屋を毎シーズン自分たちで組み建て、そしてシーズンオフになると、当然自分たちで解体。照明や換気扇の設置までも自分たちで行うそうです。
そんな手づくり感が演出する居心地の良さに包まれながら、生産現場からノンストップで提供されるかきを焼いて食べる体験なんて、まさに五感でこの場所を堪能していると言って過言ではありません。

また、島田水産では「かきの水揚げ体験」も行っているのだとか。
水揚げする船から、養殖しているイカダの作業を見学し、近くの厳島神社へ海上から参拝。
そして、海から持って帰ってきたかきをコンベアで陸揚げしていく様子を見学し、その後はかき打ち風景を見学し、普段見慣れたかきの身になるまでを知ることができる体験です。
締めのかき雑炊も大変喜ばれるそうです。

島田水産

この体験ツアーも、生産者として確かな自信が無ければ実施できない企画でしょう。
リピーターという名の強力なファンを獲得し続ける、納得の施策を教えていただきました。

もっともっと広島かきを知って欲しい!大野瀬戸かき海道に望むこと。

今回、島田水産へ取材にお伺いした理由、それは「大野瀬戸かき海道」に関する取り組みについて調査すること。
しかし、そんな大野地区のかき生産業者としての取り組みについて伺うと、意外な返答をいただきました。

三宅さん「いや、僕全然知らないんですよ(笑)以前、のぼりは見たことあったんですが。何かやってるのかなぁ…と」

以前の現地取材で、我々が覚えた「もっとアピールしたらいいのに」という感想に通じるものがあるお答えです。
海があって歴史があって、生産業者が並んでいて、宮島という観光資源も近くにある。
「大野瀬戸かき海道」という設定自体には、もっと盛り上がるポテンシャルがありそうなのに、今一歩何をしているのかよく分からないという実態。
三宅さんも、せっかく設定するのであれば、もっと広島大野のかきの認知度が広がるような活動になればと語ります。

三宅さん「『かき海道』って名前だったら、例えば県外から来るお客様は、「かきを食べるところがあるのかな?」とか「お土産でかきが買えるところがあるのかな」って期待して来ると思うんですよね。なので、例えばなんですけど、かき小屋をズラっと並べたり、大きな「かきのお土産センター」なんかを作ったりとか、動きがあればいいなとは思っています」

そういった新しい動きをどんどん作っていきたいと言う三宅さん。
確かに冬の広島といったら「かき」。その中でも「大野のかきが一番美味しいよ!」と評判が広がれば、それだけでも観光資源に成り得ます。
増え続ける宮島への観光客を、ただ「宮島観光しただけ」で帰してしまう。それはとても勿体無い話です。
「宮島の近くには大野のかきがある」と認知を広め、呼び込む動きにも繋がってほしいと、JR宮島口駅を起点とする「大野瀬戸かき海道」に三宅さんは期待します。

集客には困っていない。だけど案内役としての屋外広告の重要性は感じている。

「大野瀬戸かき海道」について、「のぼりを立てるように要請されたことがありますか?」と尋ねると、「特には聞いたことがない」とのこと。
しかし、仮に「のぼりを立てて欲しい」という話があれば、それはどんどん立てて構わないと言う意気込みもお話くださいました。

しかしながら、島田水産としては、現在特に集客に関しての屋外広告を含めた特別な取り組みについて、必要性を感じていないそうです。
提供している「かき自体の魅力」と、各メディアの取材によって拡散する情報。
そしてリピーターであるお客様の口コミ効果で、集客には困っていないのだとか。
見渡すと小屋の内部には、有名人・著名人のサイン色紙が多数飾られています。

三宅さん「仕事でなく、プライベートでいらっしゃった時のものもあります。「島田水産のかきが美味い!」って聞いてたらしくて、著名人の方が「ようやく時間ができた。ずっと来たかった!」と言いながら、かきを焼いてました。僕もその時は、「えぇ!?まさか!」って驚きました(笑)」

島田水産

集客を目的とした屋外広告の設置について現在は考えていない島田水産。
しかし国道から奥まった店舗の立地を考えて、初めて訪れた人への誘導に関しては、色々と工夫されている様子でした。
島田水産さまの店舗は国道を通過するだけでは見落とされてしまう可能性があります。
ただ国道沿いにも駐車場が用意されており、そちらにはのぼりが沢山立ち、看板も設置されていました。
一時期は、駐車場のフェンスに「かきが出来るまでの流れ」といった内容の一枚幕を設置することも、考えていたそうです。

三宅さん「ただののぼりじゃ面白くないから、一から説明を載せていき、最終的に「食べる!」みたいなものを大きな一枚でやれば、見た人は「何これ!?」って興味持ちますよね。そういうのも面白いかなって考えたんです」

三宅さん

残念ながら、その計画は実現されなかったそうですが、お客様に店やかきのことを案内し知ってもらうことについて、島田水産は意欲的です。
それらは全て「広島かきについて、もっと知って欲しい」という願いに裏付けられてのこと。広島かきが全国で評判となれば、さらにブランドの地位が向上して、現在直面している「かき生産者の後継者不足」の解消に向けた糸口もつかめるのではと期待されています。

良質な体験がもたらす効果は無限大。大野瀬戸かき海道には何があるのか。

島田水産の考える屋外広告に期待する役割は、店舗への誘導。そして「大野のかき」の認知向上でした。
「大野瀬戸かき海道」のように、一つの店舗ではなく地域の賑わいを演出するためには、「訪れる人が何を期待して来るのか」ということについて考える必要があります。
それは例えば、他では味わえない食事が出来るレストランだったり、特産品が多数並ぶお土産屋さんや、貴重な情報が並ぶ資料館なのかも知れません。
手づくりで温かみのあるかき小屋でおなか一杯かきを堪能できて、水揚げの様子を見学できる島田水産の取り組みからは、「かきを体感する」という一つのキーワードが浮かび上がって来ます。

島田水産

のぼりなど屋外広告は、案内役としての情報を伝達しながら、見た人の期待感を呼び起こす効果も与えることができる媒体です。
単純に、自分の居る場所が「大野瀬戸かき海道」であることを示すだけでは、屋外広告の使い方として中途半端。十分とは言えません
その地域で「体感」できる価値を示すことで興味を引き出し、認知を広げることができれば、それは地域にとっても、事業者にとっても有益な設置効果です。

また、訪日外国人観光客の消費志向がモノ(買い物)からコト(体験)へと変化している現在。年々増加する宮島へ向かう(あるいは帰ってきた)外国人観光客に、「産地直送のかきが食べ放題」とか「かきイカダ見学体験」があるという情報を伝えることが出来れば、それは大きな呼び込み効果が期待できます。

参考リンク
  1. 「私だけ」訪日体験プランが外国人客に大受け 墨絵体験、相撲の朝稽古、芸者体験…

今回取材させていただいた島田水産では、手書きの看板も作成され、手づくりのかき小屋との相乗効果によって、人の手によって届けられるかきの魅力と美味しさを演出していました

島田水産

どのような演出手法が、最大限の効果を発揮するかはケースによって様々。
そこには周囲の風景や、その土地のストーリーなど様々な要素を考慮したデザインや設置運用方法を考える力、そして経験が必要です
のぼりラボの研究もまた、その正解を探り、知見を深める施策の一つ。
今回の調査対象である「大野瀬戸かき海道」には何があるのか、そして何が体験できるのか。
島田水産の取材を通して、「大野瀬戸かき海道」をより強くアピールするためのヒントを得ることができました。

島田水産

ご協力いただきありがとうございました。

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取材協力:島田水産
〒739-0412 広島県廿日市市宮島口西1丁目2-6
代表電話:0829-56-2004 / FAX:0829-56-4610
かき小屋:0829-30-6356
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■かき小屋 営業時間
平日 : 10時 ~ 19時入店まで。
金曜日,土曜日 : 20時まで入店受け付け。
■直売,お持ち帰り : 8時から

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