こんにちは。ポップジャパンの石川です。
いきなり「『マネー』を表すハンドサインっぽいポーズ」をしていますが、実はこれ、弥勒菩薩の真似なのですが、お分かりいただけたでしょうか。
今回、のぼりラボは広島県福山市藤江町にある「みろくの里」を訪れました。
ジブリ映画「崖の上のポニョ」の舞台モデルにもなり、観光名所としても有名な「鞆の浦」にもほど近いテーマパーク。
自然の森が気持ちよく、プール、天然温泉、野球・サッカー場やアリーナを備えた宿泊・研修・スポーツ施設があり、広島県を代表するレジャー施設になっています。
その中で、のぼりラボ材班が注目したのは「いつか来た道」という、昭和30年代を再現したコーナー。
過去の風景を忠実に再現し、タイムスリップしたかのような感覚とノスタルジーを思い起こさせる仕掛けに「個性的な賑わいの風景があるのでは」と考えたのです。
210万平方メートルという広大な敷地の施設を運営するのは、国内外で実績を重ねる造船会社・ツネイシホールディングス、そのグループ会社のツネイシLR(株)です。今回は広報の寺本聖秀(てらもと・きよひで)さんを訪ね、興味深い話を聞くことができました。
前編では「いつか来た道」を実際に歩きながらご案内いただいた様子を紹介。
昭和30年代をモチーフにした風景を懐かしさと共に、たっぷりとお楽しみ下さい!
細部まで手を抜かない映画製作者とコレクターたちのこだわりを体験。
僕は昭和56年生まれなので、昭和30年はリアルタイム世代ではないのですが、すでに懐かしさを感じています。
そうですね。「いつか来た道」は「みろくの里」がテーマとしている「三世代テーマパーク」の重要な位置を占めています。モチーフになっているのは昭和30年代。当時を知る人たちが懐かしむだけではなく、若い世代の方にも新鮮な感覚で楽しんでいだだけています。
塀囲みの境界があって、ここから別世界という期待が高まる演出がされていますね。正直なことを言うと、この「本気度」は予想以上でした。竹製のポールに綿素材らしい風合いののぼりも立って、すでに時代感の演出が始まっていますね。
実は「いつか来た道」も、当初は期間限定の予定だったのです。しかしいざオープンしてみると様相以上の好評で常設施設になりました。そこから、内容をより充実させるために、作り込みに力を入れました。
敷地入り口から施設へ入る道にしても、単純に「古いもの」と言うだけではない趣があると言うか、力が入っていますね。あのミシン台なんて、お婆ちゃんの家で似たのを見たことあるし…
建物へ続く道の脇は、「昔の農家」をイメージして作っています。順路に沿って道を抜けると、次は郵便局と小学校のある建物ですね。
こちらは「みろくの里郵便局」となっていて、細部まで作り込まれています。このリアル感を再現できるなんて、いや、これってすごい技術じゃないですか?
再現って言うか、実際に福山市で使われていた郵便局の一部を移築してるんですけどね。
!?
当時の郵便マークの透かし彫りが窓にあったりしたものをそのまま展示しています。資料価値も高いと思いますよ。
窓口では綺麗なお姉さんがご対応
郵便局を抜けると、次は架空の小学校「弥勒村立中山南小学校ゾーン」ですね。
こちらも広島県内の庄原市の学校で、実際に使われていたものを移築・再現したと聞いています。机や椅子のサイズは当時のままですね。
備品の本物感がすごい!(本物なんだけど)
今だとSNSで晒されて拡散・炎上する恐れがある昭和の「お仕置き」。
校長らしき人が顔に落書きにされてる。尊敬されてないなぁ。
歴代校長の写真が飾ってる光景は校長室あるあるですね !僕も学校で見たことがあります。額の写真は当時の校長先生ですか?やっぱり貫禄がありますね。
いえ、これは役者さんですね。
!?
後になってから当時を緻密に再現した部分も多いですね。演出の強化には力を入れています。違和感のない完成度には、未だに私たちも驚かされます。
匂いさえ感じられそうな懐かしくもディープな昭和世界に触れる
そして、いよいよ街の中という風景ですが、この雰囲気は凄いですね!
ここは昭和のガード下を再現しています。映画製作会社の東宝さんに協力いただきました。
東宝 ! 世界を代表する映画のセット技術で、作り込んだ風景ですね。ちょっと妖しい(あやしい)というか、当時のアバンギャルドな空気が漂っています。ここでも、何本かのぼりが立っていますが、やはり竹製のポールに綿素材で一色刷りと、当時のプリント技術の水準に沿ったものが立っています。徹底してますね。
現代には無い風景ですし、薄暗さもあってか「お化け屋敷」にも感じられて、恐がる子供さんも居ますね。
分かる気がします。現代と比べて薄汚れてて、街角の隅にに陰(かげ)ができる雰囲気は、子供からしたら得体の知れない異世界なのかも知れません。
他にも来場されたお客様から「こんなものが家にあるんだけど使えませんか」と寄贈いただくこともあります。それがまた、風景に新しい色を加えてくれます。
来場者が演出者になる、まさに「進化する施設」ということですね。こちらのお店も、実際には入れないようですが、充実したアイテムのリアル感が当時の時代感を「これでもか!」と訴えかけてきますね。
ガードの上に登ることができますよ。また違った景色が見られるので、行ってみましょう。
こうして見おろす風景も独特ですね。そして流れている音楽や町の喧騒が、いいBGMになっていて、当時の匂いさえ漂ってきそうです。
看板の味わいにもこだわっていますし、実際の建物サイズに対して縮小して作られています。引きで見た時、本物の大きさを体感できるよう工夫されています。
さまざまな店舗があるのも、新しい発見になります。奥まった路地に入れば回遊もできるし、これはむしろ、わざと迷いたくなりますね。よりディープな昭和の世界に誘われそうな気さえしてきました。
5感で味わう体験型施設は、まるで昭和の歴史資料館
今まで堪能していただいた屋内施設は「昭和館」と言います。そして、ここから先の屋外施設では、実際に触れたり買い物したりすることができますよ。
より「昭和の体験」が深まるというワケですね。
まずは電話博物館です。地元福山の電話コレクターの方がお持ちのコレクションを展示しています。週末には博物館の館長として、ご本人が登場します。電話交換手になり、実際の通話体験を楽しんでいただけます。
しかし、すごい数ですね。携帯電話などは平成の物も多くありますけど、「懐かしい」というキーワードで括るとまるで違和感がありません。
面白いのが、子供さんにダイヤル式の電話を体験してもらおうとすると、数字の書かれてる箇所をプッシュしようとするんです。つまり現代では「ダイヤルを回すという概念」が消失しているということに気付かされます。
確かに僕自身、最後にダイヤル式の電話を触ったのがいつだったか思い出せません。今ではプッシュどころか、スマートフォンではボタン自体ありませんからね。時代を表す光景だと思います。
「電話博物館」の外に出ると休憩スペース、砂絵や染物を体験できる場所があります。
こちらの建物に入ると、また魅力的な昭和臭が漂っていて、いい感じですね。なにか映像が流れていますが、これは映画ですか?
こちらは10年分の出来事を30分で見せてくれるニュース映画館です。懐かしい家電品や家具も見どころですね。テレビのデザインなど、今の時代に見ても個性的です。
私自身、お客様から当時のことを教わる機会も多いですね。勉強になります。こちらはおもちゃ屋さんのイメージですが、コレクターさんの寄贈品が飾られています。そして駄菓子屋さん。実際に10円から買い物が楽しめます。
こちらにはのれんがありますね。決してプラ製のポールを使わない姿勢に、細部まで昭和を染み込ませている本気がビシビシと伝わりますが、お、みろく坊やが「国民的栄養ドリンク」とコラボしていますね。
外ののぼりはプラ製のポールにポリ繊維の生地で多色刷り。使い分けが徹底している。
彼の今後の活用も検討中です。もしかしたら新たなキャラクターが登場するかもしれません。こちらではアイスクリーム、たこ焼きなどを実際に販売しています。民芸品などの買い物、射的の遊びも楽しめます。
夏は夜の営業もあり、広場では縁日のようなイベントも実施しています。
映画やドラマの資料と撮影機材も展示されていますね。
現在は一般公開していませんが、二つの映画セット村があり、時代劇に使われる町並みを保存・活用しています。大河ドラマにも協力しています。
こっちは昔のシングルレコード盤ですか!しかも中身が入ってるし、この枚数!宝の山じゃないですか、ここは!
持って帰らなければ、自由に見ることができます。レアものが発見できるかもしれません。
映画のポスターも素晴らしいですね。さすが東宝のバックアップです。
持映画の撮影風景が、セットで組まれ、映画のタイトルは「いつか来た道」。細かいでしょう。
建物途中の上がり下りも、不思議な感覚ですね。突然また別の屋外へワープするような。
こちらもイベントの賑わいを楽しむ場所です。広さはかなりありますよ。それに続くのが、いつか来た道食堂街です。学校給食時代の黄色いカレー、ハヤシライスなど、懐かしいメニューが人気ですね。ここから下りていくと、ようやく施設を一周したことになります。
ざっと施設の中を案内していただきましたが、内容の充実ぶりが凄くて全部を堪能するには、かなりの時間が必要ですね。
お好きな方は「1時間でも足りない」と言われます。ざっくり流しても30分はかかるんじゃないでしょうか。
予想以上の規模で、大人の鑑賞にも充分な演出を実感できました。失礼ながら「子供だましだろう」と考えてた、先程までの自分に猛省を促したいですね。
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予想外に広く、そして充実した内容にすっかり魅了されてしまったのぼりラボ取材班。
「いつか来た道」は、昭和という時代へのノスタルジーを呼び起こし、同時に現代ではもう体験できないモノへの新鮮さがありました。
人生の大部分を昭和に過ごした世代。
幼き頃の思い出として少し昭和を掠った世代。
そして、昭和を知らない世代。
まさに三世代が同時に、それぞれの感覚で楽しむことができる施設として成り立っていました。
後編では、いよいよ「いつか来た道」の誕生秘話から、「みろくの里」の新たな取り組みと、これからテーマパークとして生き残るための考え方。
そして、その施策の中で活かされるテーマパーク施設の装飾品について紹介します。
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