こんにちは、ポップジャパンの石川です。
僕は今回、広島市西区の横川商店街に来ています。
商店街と言えば、以前のぼりラボでは同じ広島市内にある「鷹野橋商店街」を取材した事がありますが、
こちらの横川商店街でも近々、なにやら面白そうな動きがあるとの情報を聞きつけやって参りました。
と言っても、ポップジャパンとして昨年のハロウィンには 渾身のゾンビ を送り込んだ実績がありますので、横川商店街の面白さと言うか「一味違う感じ」のはよく知っているのですが。
渾身のゾンビ
早速、横川商店街を散策しようと足を踏み入れたのですが、いきなり気になるポスターが目に付きました。
横川…カンパイ!王国……建国!?
「建国!! 横川カンパイ!王国」と書いてありますし、その建国は4月の21日なんだとか。
まずもって「建国」というのも分かりませんし、「横川カンパイ!王国」というのも謎です。
何なら席を並べている人の怪しげな恰好も気になりますし(貴族?)、その中心にいるキャラクターはトマトです。
改めて見渡すと、建国のポスターがいたる所に張ってある
額面通りに受け取るならば「横川が独立する」ということになりますが、そんなことがありえるのでしょうか?
疑問符のラッシュに脳が追いつかないので、実際に横川商店街の振興組合で理事長を務められている「村上正(むらかみただし)さん」に本当のところを教えてもらいました。
率直な疑問、「横川カンパイ!王国」って何だ?
「本日はお忙しいところ、ありがとうございます」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「今日こうして伺ったのは「横川カンパイ!王国」について教えていただきたかったからなのですが、そもそも「横川カンパイ!王国」って何なのですか?」
「いきなり核心を突きましたね」
「すみません。もう商店街が「建国」と言っている時点で頭の整理が追いつかなかったものですから」
「分かりました。そこまで言うならお教えしましょう!実は「横川カンパイ!王国」というのは…」
「…(ゴクリ)」
「ただの遊び半分なんです」
「……え?」
「遊び半分です」
「そんな!普通建国って、何か大きな目標とか野望とか大義名分があるものじゃないんですか?どうしてそんなことで建国してしまおうと思ったのでしょうか?」
ノリで建国。そんなことがあるのか…
「とは言え、確かに半分は遊びですが、もう半分にはちゃんとした目的がありますよ」
「あ、それそれ!それです!そちらの方を教えて下さい!」
「元々横川商店街では色々なイベントや企画に取り組んでいました。ポップジャパンさんにも協力いただいたハロウィンの「横川ゾンビナイト」や2月の「横川バレンタイン」、それに4月の22日には「ふしぎ市」も開催しますし、女子サッカーチームを立ち上げたり映画を作ったりしています」
「確かに横川って色々な面白い取り組みやコンテンツがあるなとは以前から思っていました」
「そうなんです。色々やっているんですが、でもやっていることが個々でバラバラだと、外部から見たときに訴求力が弱いんですよね。統一感が無いと言うか。」
「言われてみれば「2月はバレンタインで花火かぁ」「4月はふしぎ市かぁ」ていう単発だと、もう一歩まとまりが感じられませんね」
「そこで、「今まで横川で取り組んできたことを、一つにまとめてブランドにしたらどうか」と言われて企画を考え出しました。これが「横川カンパイ!王国」発足のきっかけでした」
「おぉ…つまり、「横川カンパイ!王国」は横川をまとめるブランド名だったということですね」
「ここには「今まで商店街で行ってきたコンテンツをまとめて、横川のイメージを一つにしよう」という想いが込められています。横川商店街とそこにあるコンテンツを、もっと世の中に売り込んでいこうという取り組みですね」
「今まで散発的だったイベントも、これからは「王国のイベント」として行うことで、より統一感が生まれるということですね」
横川のアート・カルチャーを引っ張る横川シネマ
「実は僕自身、横川地域で暮らしていた時期がありました。その時から横川シネマとか、横川が舞台の映画があったり、文化的というかアート的な空気を横川に感じていたのですが、昔からそんな活動が盛んだったのですか?」」
「そうですね。やっぱり横川シネマの存在も大きくて、支配人はマイナーでも厳選された、観た人を後悔させない映画を上映したいというポリシーを持っています」
「確かに、いわゆる一般的なシネコンでは、なかなか目にしないようなラインナップばかりです」
「まぁ、お金がなくて大作が買えないという事情もあるわけなんですが」
「急に身も蓋もない話になりましたね」
「実際、家賃の支払いも遅れるくらい厳しかった時期もあったようですけど、でも頑張ってましたね。食事だって満足に取れてなかったんだろうけど、良い映画を作るのに上映の機会がない映画監督の作品を売上折半で上映したりしてたし」
「あ、なんか、そういうエピソードはアーティスティックな匂いというか雰囲気があって良いですね」
「そうかなぁ。「腹減ったんでコンビニ行ってきます」て出ていったんだけど「タバコ買ったら弁当代無くなった」って帰ってきたこともあったよ」
「…」
「その時はさすがに「タバコより弁当だろ!」って言いました」
「100%正しいと思います。しかし、そんな横川シネマも設備が新しく生まれ変わったと聞きましたが」
「今はもう映画もデジタル化してるので、デジタル映写機のシステムに入れ替えないと、そもそも上映が出来ないんですよね。でもシステムの入れ替えには結構なお金がかかるので、実は困っていたのですが、補助金を使ってなんとかすることができました。まぁ、我々も借金したのですが」
「なかなか簡単なことでは無かったのですね」
「だけど街にはやっぱり映画館が欲しいですし、ちょうど廃館される八丁座さんが『そういうことなら要らなくなった座席をあげるよ』ということでフランス製の一脚17万円する椅子を70個タダで下さいました」
「うわ、すごい」
「廃棄するのにもお金が要りますから、お互いにメリットがありました。それにスクリーンもステージとして利用できる形にしました。補助金の名目が「地域の交流拠点にすること」でしたので、ステージ化することで演劇や講習会に使えるようになりました」
「今でも名前には『シネマ』とついていますが、映画というワクを飛び越えて、色々な分野で利用できる施設となっているんですね」
「そうですね。地域の人達にもかなり利用していただいています。デジタルのシステムとか豪華な椅子とか色々と環境も良くなっちゃって、なんやかんやで今の横川シネマって経営がメチャメチャ良いんです。不思議なものですね」
「タバコとお弁当を両方買えるようになったのなら良かったです」
横川に集まるアートな人々
「そんなことをしていると、西区民文化センターの当時の館長さんがとある若者を連れてこられて言うんです「この子は有望な映画監督で、横川シネマが好きで通っている。横川で事務所を設けたいと思っているから探してくれないか?」と」
「いいですね。何か物語性を感じます」
「「ただしお金は一銭もない!」と」
「あー…、それで、探してあげたのですか?」
「聞いて回ると、商店街の中で3階建てのビルを持ってて3階を倉庫代わりにしている人が居ましたので、『貸してやってくれないか』と話しましたよ。そしたら最初は小さな事務所だったんですけど、だんだんオーナーが洗脳されたんでしょうね。他のスペースが整理されて最終的には劇場を作ってました」
「とんでもないサクセスストーリーじゃないですか!?」
「そんな話が広がって、出入りする若者がますます増えるました。だけど、その時の監督は今、東京で自分の会社をやってますよ」
「やはり何か光るものを持っていたということでしょうか」
「そうですね。確かにその時に見た映画はおもしろかったです。他にも、当時出入りしていた若者も今ではプロの役者になったりとかして、みんな東京で地盤を築いてます。何だかんだで、横川と縁があった人たちが一人前になる姿を見るのは嬉しいですね」
「そういえば、こちらに来る前に横川駅の北口の方も見てきました。横川に住んでいた時に通っていたお好み焼き屋さんがあったのですが、今はもう工事で無くなってて、だけどその工事している壁やシャッターに大きなストリートアートがあって、また横川の新しい風を感じました」
「横川シネマの壁にも大きなストリートアートがありますが、こちらはSUIKOという広島市立大学芸術学部の卒業生なんです。海外の大会にも出てて有名ですよ。何かのツテで『横川シネマの壁に絵を描きたいです』と言ってきてくれて、こちらも「いいよいいよ」て描いてもらいました」
横川シネマ壁面のアート。デカい…
「ノリが良いと言うか、基本的にオールオッケーなんですよね」
「本人も人に見てもらえる場所に絵を描くことは喜びらしく、それは良いのですが、いざスタートすると足場を組んだりレッカーを手配したり商店街としては大変でした。なにせ金額が高くて…」
「あぁ、またお金の苦労が…あの、僕、ちょっと分かっちゃったんですけど『やっちゃえやっちゃえ!』て感じがお好きなんじゃないですか?」
「実はそうなんです。考えるのはいつも後回しですね」
「だけど、その推進力や勢いこそが、横川商店街が盛り上がっている秘密だと思います。今ではついに「建国」ですからね。凄いですよ!」
横川カンパイ!王国に込められた野望とトマトンの秘密
横川商店街のマスコット、トマトン。
「「横川カンパイ!王国」ではポップジャパンでもガイドマップを作成するなどお手伝いをさせていただいていますが、結構外国語のアナウンスにこだわっているように感じられましたが、やはりインバウンドへの意識も大きいのでしょうか?」
「正直なところ、「カンパイ!王国」というネーミングも含めて意識していますね。」
「やはり人を呼び込む取り組みとしては、避けては通れないポイントですね」
「実際、ゲストハウスも商店街の中に1箇所できていますし、この5月から商店街自体でも二部屋ほど用意するために準備を進めています。こちらは一部屋を丸貸ししますので長期滞在やファミリーで滞在するのに向いていると思います」
「着実に準備は進められているのですね」
「やっぱり『広島に来た人って宮島と平和公園を見たら帰ってしまう』という現状があって、とは言え、呉や尾道だと一緒にするには距離が遠すぎるんです。なので『横川で引き留めよう』と。そして広島に宿泊してくれる人を増やそうという思惑があります」
「なるほど。横川が広島を長く楽しんでもらうキーポイントとなるわけですね」
「実は密かに大きな野望があるんです。まだこれ内緒ですよ。恥ずかしいから」
(※ごめんなさい。書いちゃいました)
「実際こうして考えると、かなりディープな魅力があますよね。横川って」
「とは言え、普段なにもない時にフラっと来てもらっても特にコレ!っていう見処ってまだ分かりませんから、そういう意味では、今回ポップジャパンさんに作っていただいたマップが大きな役割を果たしてくれるのではないかと期待しています」
「是非、いい効果につながればそれだけで僕たちも嬉しいですし、励みになりますね」
「マップには鯉の養殖をしているトコロや、染め物屋など色々とおもしろいトコロを掲載していますし、事前に申し込みや相談をして頂けたら体験もできますからね。そしたら横川に滞在してもらう機会も増えるのではないかと思います」
「今回伺う前に、横川カンパイ!王国のWEBサイトなどを拝見したのですが、動画も作られてて凄いなと思いました。実際遊び半分とは言え、かなり本気ですよね」
「そして、建国にあたってのポスターもポップジャパン社内にはってあるのですが、このキャラクターが国王のトマトンなんですよね?」
「そうですね。トマトンと言います。この度国王に就任しました」
「率直な疑問なんですが、なぜトマトなんでしょうか?横川ってトマトが有名でしたっけ?」
「それはですねぇ…色々な人に訊かれるんですが、真実を知ったらみんなガクっとされるんですよねぇ」
「そう言われちゃうと、逆に気になります」
「市内中心部に『並木通り』ってありますよね。その商店街の会長さんに街づくりについて講演をしていただいたことがありました。そしたら帰り際にですね、会長さんが『横川ってトマトですよね』って仰ったんです」
「?」
「そうなんです。私もその時『どういう意味ですか?』て訊いたのですが『いや、なんとなくトマトのイメージがある』と言われるんです。」
「なんとなく…トマト…ですか?」
「『なんでですか?』と訊いても『いや、とにかくトマトのイメージだ』としか言われなくて、その後商店街のイメージキャラクターを作ろうとなった際に、『トマトのイメージって言わてたし、トマトにしようか』となりました。そして生まれたのがトマトンです」
「え?それだけですか」
「それだけです」
「…」
「…」
そうですか。
「最後になりますが、今回いよいよ4/21に建国するということで何かアピールと言うか発信したいことはありますか?」
「根本的な部分は商店街の活動に関わりだした当初と変わってなくて『皆さん、いらっしゃい!』の精神なんです。今回も同じで、『国境の無い国』ですからどなたでも来て下さい!一緒に遊びましょう!という気持ちです」
「最初はなんだか分からない「横川カンパイ!王国」でしたが、今回お話を聞いて、その想いや意気込み、そしてまさしく横川商店街だからこそ実現できる取り組みであることを知りました。本日はありがとうございました」
最後に
今回は横川商店街で振興組合理事長の村上さんにイロイロと聞いてみたお話でした。
横川シネマを筆頭にアートな文化が根付く商店街には、他にも星座が埋め込まれた星の道や「日本最初のバス」と言われる「かよこバス」など見どころは盛りだくさんです。
「横川カンパイ!王国」の記念すべき建国は4月21日の土曜日。
色々な建国イベントが催されるそうなので、週末は是非、横川商店街に遊びに行ってみてはいかがでしょうか!
横川商店街情報
横川商店街
http://e-yokogawa.net/
横川カンパイ!王国(4/21建国!)
http://k-o-y-kanpai.com/
横川ふしぎ市(4/22開催!)
http://e-yokogawa.net/mystery
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