のぼり旗で使用される生地には様々な種類があります。
現在、ポップジャパンも含めて最も多く使用されているのぼり旗の生地は『テトロンポンジ』という名前で、一般的に『ポンジ』と略称で呼ばれています。
『ポンジ』は、ポリエステル繊維が織り込まれている生地で、原料は石油です。
安くて軽くて風によくなびく、のぼり旗にうってつけの生地です。
また、裏が透けて見えるくらい薄いので、裏面から見てもプリントされた内容が見えるのもポイント(左右は反転して見えますが)。
表面と裏面の両方からデザインが見られるので、やはりのぼり旗の特性と相性が抜群な生地です。
しかし、生地が薄いことは耐久性が低いという弱点にもなります。
強風が続いたり、バタバタと何かに当たり続けるような悪条件が重なると、設置して3時間も経たずに端がほつれてしまう事例もありました。
それでも『ポンジ』が持つコストパフォーマンスの良さと、のぼり旗との親和性が抜群なことは魅力的。
のぼり旗界全体で『ポンジ』のシェアは圧倒的です。
しかし化学繊維のポリエステルで織られた生地は、廃棄する際の環境への配慮は必要不可欠。
また『のぼりラボ」』では、以前から『のぼり旗には賞見期限がある』と発信してきました。
「のぼり旗は定期的に交換することで最大限に活かすことができる」という実験結果も得ています。
『のぼり旗に賞見期限がある』ということは、『のぼりは消耗品である』という意味です。
それだと賞見期限切れのぼり旗って、どうやって処分すればいいの?
こちらの記事では、のぼり旗のリサイクル事例についても調査し紹介しました。
プラ製品を筆頭に、化学製品の環境に配慮した処分方法は現在とてもホットな話題です。
今回ののぼりラボでは、『のぼりの素材』という一面から、「環境に優しいのぼり」の可能性について調べてみました。
自然に還るエコ生地!その名も「ポリ乳酸繊維生地」
環境に優しいのぼり旗ができそうな生地。
それは、植物(トウモロコシ)由来の「ポリ乳酸繊維(ポリにゅうさんせんい)」という素材からできています。
このポリ乳酸繊維は植物から出来ているため、自然環境下にあると完全に分解されて土に還ってしまうという特徴があり、あらゆる分野での応用が期待されています。
そんなスゴい繊維を織り込み、生地に仕上げた製品も開発されているのですから、これは「環境に優しいのぼり旗」を考える上で、最高の素材と言えるます。
ポリ乳酸繊維の特徴をさらに掘り下げると、以下の通りです。
「分解されて自然に還る」という環境問題を考えた特性を活かして、農業用シートや園芸ネットなどにも幅広く利用されていて、今後の発展が期待されています。
しかし調べていると、ポリ乳酸繊維を扱うには大きな問題があることが判明しました。
それは、耐熱性がポリエステル繊維よりも低く、乾燥などで110℃以上の環境に入れると、生地が変質してしまうということです。
とうもろこし繊維(ポリ乳酸繊維)の染色 ― 捺染について ―
http://www.kasei-gakuin.ac.jp/library/kiyou/zenbun/43N43.pdf
ポップジャパンで使っている捺染の乾燥機や、昇華転写機では生地を約200℃に熱します。
ということは、今のままでは製造過程の中で生地が変質し、商品として成立しなくなるのです。
実際に、現在のポリ乳酸繊維生地の染色方法には、生地が変質しない90℃程度での侵染(しんせん)という手段が用いられています。
『侵染』とは『染料の溶液の中に生地や織り糸などを浸して染め上げる染色法』。
今後、ポリ乳酸繊維でも耐えることができる110℃以下でプリントできる技術が導入されることが、環境に優しいのぼり旗つくりへの大きな一歩となりえます。
環境への配慮という緊急課題
今回紹介した『ポリ乳酸繊維』の他にも、環境に配慮した生地として『エコポンジ』という生地があります。
主にペットボトルから再生された『リサイクルポリエステル繊維』を織り込んだ生地で、こちらは既にのぼり旗製造で使われています。
ポップジャパンでもプリント実績のある生地ですが、風合いや発色などで、通常のポンジとの違いは感じませんでした。
しかしエコポンジは、コストのもんだいで、まだ『ポンジ』ほど普及していません。
『ポリ乳酸繊維生地』は上述の通り、製造上の問題が残っています。
『のぼり旗に賞見期限ある』以上、期限の切れたのぼり旗の処理について考えることは、のぼりラボとして取り組むべき環境問題です。
この大きな課題を解決するために、引き続き新た素材を探し、環境に優しいのぼりへの活用方法について調査を続けていきたいと思います。
コメント