家の氷とお店の氷、何が違うの？　氷のプロに聴きに行く

本日はよろしくお願いします！

今日お伺いしたいのはプロの目線で見る製氷についての全てです！

よろしくお願いします！

全てをお伝えするのは難しいかもしれませんが、氷の面白い所や己斐製氷の取り組みについては存分に分かっていただけると思います！

社内を見学しつつ色々見ていきましょう。

疑問についてはその都度、質問していただければ回答します。

では、早速ですが氷ができるところを見に行ってみましょう

製氷会社のキモの部分ですね、見たことないです！

そうですよね、恐らくびっくりすると思いますよ。

じゃあ、こちらの板の上をついてきてください、滑るかもしれないのでお気をつけて

？？　何ですかここ？　まな板みたいな板がいっぱいありますね

ちょっと見ていてくださいね。

ヨイショ

このまな板みたいなの、蓋だったんですね！

それで、その下は……長方形にセパレートされた小部屋みたいなのが何個もあって？

あ、もしかしてこれが冷蔵庫でいうところの製氷機や製氷皿みたいなところなんですか？

そういうことです。

ちょっと近くで見てもらうと分かるんですが、凍ってきているのが分かりますか？

この大きさの氷がゆっくり作られていくんですよ

ホントだ、凍ってる！　デカい！

でもこの位の大きさだと固まるのに1日くらいかかったりするんじゃないですか？

これだけ大きいと時間がかかりそうですね

4日です

え？

4日かかります。

ゆっくり凍らせるんですよ。

作り始めるところも見てみますか？

是非お願いします！

そんなにかかるんですね

じゃあ、ここにセットしていきますんで見ていてくださいね

これで、製氷の準備できました

空気で水をかき混ぜます。

こうすることでゆっくり凍らせることができて、より透明な氷になるんですよ。

縁の方が固まり始めると、中央の水を入れ替えてより透明になるよう工夫もしています

それについて詳しく聞いてみたかったんですけど、お家で作る氷って白っぽいですよね。

市販されている透明な氷との違いってなんなんでしょうか？

一言に言ってしまうと、純度の違いであの白いのは気泡やカルキなどの不純物です。

水が急速に凍ってしまい、逃げ場がなくて氷の中にそれらが残っちゃっているわけです。

白い氷は飲み物に使うと雑味の原因にもなりますし、早く解けちゃうんですよ

なるほど、じゃああの白いのは可能なら取り除いた方が良いわけですね

そういうことです。

反対に純度の高い氷は雑味が無いことに加えて解けにくい特性があります。

その特性から飲食店や高級かき氷店で製氷工場の氷はよく使われるんですよ

解けにくいから飲み物やかき氷もゆっくり楽しめるわけですね。

製氷工場もお店もこだわりがあるわけだ

こだわり、でいうと己斐製氷ではブランド氷も展開しているんですよ。

日本酒の仕込み水を使った氷や、宮島の地下水を利用した氷、144時間かけて製造する最高峰の純度を持つ氷なども作っています

氷にもブランドがあるんですね！

良い氷でお酒を飲む理由がまた一つ増えました

お次はできた氷をカットする現場です

改めて、目の前にあるとすごい大きさですね。

10泊するときのスーツケースくらい大きいです。

これ、どうやってカットするんですか？

この丸鋸で切ります。

この刃の部分にグイっと押しやってやるとスパッと切れてくれます。

実際に切るところを見てみましょう

この氷を

こう切ります

すごいパワフルだ。

豆腐みたいに切れていきますね。

ちなみにその左手に持っているやつって何なんですか？

ゴジラに出てくるガイガンの手？

これは手鉤とか氷鉤と呼ばれる器具ですね。

これを氷に引っ掛けて滑らせるように移動させるんです。

製氷の必需品かも

手の延長みたいに扱うわけですね。

かっこいい。ガイガンみたいだ

あ、壁に掛けてある大きなノコギリ。

これも氷を切るためのノコギリですか？

そうです。

これ、刃のところ見たら何か変わったところがあるんですが分かりますか？

なんだろう、少し刃が荒い気がしますね。

これも何か氷を切るのに都合がいいんでしょうか？

多くの方がパッとイメージするような細かい目のノコギリで氷を切ると、目に細かくなった雪が詰まってしまうんですよ。

目が粗いことで雪が詰まりづらくなっているんです

お～、先人の知恵と技術が器具にまで現れているんですね。

これで氷を切ったらストレス解消になりそうです！

長い氷の歴史の中で最適化されていった形なのかもしれないですね。

では、ここで切った氷たち、これからどこへ運ばれていくと思いますか？

そりゃ、皆さんの食卓へ……

……これから冷凍庫へ運びます。

それを見に行ってみましょう。

製氷のイメージ通り、しっかり寒いので心構えを

外の気温考えたら余裕ですよ！

暑いのは勘弁ですけど寒いのはいくらでもウェルカムです。

いってみましょう！

寒すぎ(笑)

思わず笑っちゃう寒さですよね。

ここにはカットされた氷や製品化された氷が保管されています。

いろいろなタイプの氷がありますのでそれをいろいろ見ていきましょう

人間って寒さに弱いなと改めて悟りました。

是非いろいろ教えてください！

じゃあまずこちらをご覧ください、これ何だと思いますか？

緩衝材で梱包されていますね。

これはさすがにガラスとかじゃないんですか？

ちょっと開封してみますね

花の形の氷だ！

それでこっちは……

こっちは星形だ！

いったい何に使うものなんですか？

これはお洒落なバーとかでお酒を入れるのに使ってもらっているみたいです

うわ、いいですね～。

容器が氷ということでエンタメ性があって目でも楽しめるし。

これで飲むお酒、うまいだろうなぁ～

氷の魅力が分かってきましたね。

じゃあお次はコチラをご覧ください！

これまたファンシーなものが出てきましたね。

丸い氷の中に、カラフルなおもちゃ？

この丸さと中のおもちゃ、何かを想起させますよね。そうです。カプセルトイです

まだ全然答えが出てきていないうちに答えを教えて頂きました。

カプセルトイというと、あの硬貨を入れてレバーを回す子どもに大人気のあれですよね。

まさかこの氷をあの機械に入れるわけにもいかないじゃないですか。

これはどうやって使うんですか？

入れました。あの機械に

なるほどなぁ～

イベント用の企画で子どもたちに遊んでもらうために考案しました。

子どもにとってはこういう丸い氷もなかなか触れる機会がないじゃないですか？

だからそこも含めて楽しんでもらえました

確かに子どもにとって真球に近いものって宝みたいなものですからね。

物珍しさもあって楽しさも増すことでしょう

子どもを喜ばせる氷、となるとこんなものもあります

ん？

でっかい氷におもちゃが生き埋めにされています。

そしてクモのおもちゃと今、目が合っています

これは氷柱宝探しという氷を水鉄砲で撃って溶かし、おもちゃをゲットしてもらうという企画で使用されるものです

子どもが見たらテンション上がっちゃいますね。

私の中の童心もうずき始めています

子どもたちからは大好評で、イベントを主催されている方からもお褒めの言葉をよくいただくイチオシの企画ですね

やはり大きな氷を目の前にすると人は自分でいられなくなるんですね

次は大人も喜ぶ氷ですよ

これは、氷の器ですか？

そうです、そのまま氷器と呼んでいます。

氷を砕いて出来た雪をプレスしてこんな形にするんですよ。

飲食店などで使ってもらっています

雪かぁ。だからこれは白っぽく見えるんですね。

これにお刺身とかが盛られていたら、それだけで華やかになりそう。

良いもの食べてる感がマシマシに

清涼感もあって、ちゃんと冷たいので食材の鮮度も保てるんですよ

一挙両得じゃないですか。

しかし、お刺身の話とかしちゃうとアレですね。

飲みたくなっちゃいますね

そういう人向けの商品もあります

氷でできたビアジョッキです！

今日半休取ったら飲んでいいんでしょうか、カメラマンさん！！

しかし、こうして色々ラインナップを見せていただくと、己斐製氷さんの製品にはどこかにエンタメ性が含まれているようにお見受けしました。

ただ何かを冷やすだけのものから、付加価値を与えて面白いものへと昇華しているような……ん？　あれは？

寒さでクリオネの幻覚が見えました

あれは私が作った氷の彫刻なんですよ。

実は氷アーティストとしても活動していまして……

ええー！！　早く言ってくださいよ！　

その話、じっくりお伺いしないと！

さっきお渡しした名刺にも書いてありますよ

それを言っちゃったら記事の中の嘘がバレちゃいます。

では、気を取り直して池田さんが氷彫刻を始めたのはいつからなんですか？

私が己斐製氷に入社して3年目の頃ですね。

こっそり氷を拝借して独学で練習していました

それからドンドンのめり込んでいったと

そうですね。最初はコソコソ練習していて、それから同僚の結婚式で披露して、周年祭で披露して、マツダスタジアムで氷彫刻を作ったりして、といった具合に様々なご依頼をいただけるようになりました

そう聞いちゃうとめちゃくちゃトントン拍子に聞こえるので不思議。

色々大変だったこともあったでしょう

それはもう。

暑い時期の氷彫刻は解けないように一日中冷凍庫で缶詰めになって作業するので凍えそうですし、マツダスタジアムは6連戦で毎日彫刻を作って本当に大変でした

やはり氷を扱うのは時間の制約や温度の制約があって、我々の想像以上にハードなんでしょうね。

そもそもの話になるのですが、池田さんはなぜ氷彫刻を始めようと思ったんですか？

それは私が己斐製氷に入社した頃の話もしなくちゃいけないんですけど、いいですか？

是非！　人生の話を聞きたいです！

では。当時の私は製氷という仕事のハードさと、氷の扱いの悪さに不満が募っていました

氷の扱いの悪さ、というと具体的にはどういった部分を指すんですか？

氷が何かを冷やすだけのもの、つまり脇役だ、という認識だったんです

ハードな仕事となかなか日の目を見ない氷。

理想との乖離に悩んでいたということですね

そういうことです。

それでついに3年目、社長と衝突しちゃって。

でも衝突を何度も繰り返すうち、最終的に社長が私の要求を全部飲んでくれたんです

肝が冷える話。でも社長もそれを飲んでくれる気前の良さがカッコいいですね

そこからはもう、会社に貢献することを第一に考える様になりました。

そして、丁度その頃に氷彫刻を偶然目にしたんです。

氷が主役を立派に果たしている姿を見て、会社のためにできることはこれだ！ と思ってそれから私も氷彫刻を始めたんです

こっそり氷を拝借して？

社長にバレないように、クビ覚悟で

肝が冷える話。

では、そこからは氷彫刻家として氷に触れる機会を作ることで、氷に目を向けてもらう活動をされてきたわけなんですね

そうですね、氷の彫刻以外にも先ほど冷凍庫で見ていただいた氷柱宝探しや降雪ショー、氷の滑り台など多くの人が氷の持つ面白さや綺麗さに改めて気づいてもらえるような活動を続けてきました

なるほど、さっきの冷凍庫で感じたエンタメ性とはこういった部分から生まれた感想なのかもしれません。

氷の持つ魅力をアプローチしていく、素晴らしい試みです

では、最後になりますがこれからの氷業界について池田さんのお考えを聞かせてください

正直な言い方をすると氷業界は斜陽産業です。

氷は単価が低いですし、企業としても設備投資をしづらい現状にあります。

ですが、それらは氷の魅力の周知不足が遠因だと思っています

魅力が一般にはまだまだ伝わっていないと

そうです。今日お話ししてきたように製氷工場の氷には魅力が沢山あります。

飲食で使われる氷は雑味がなく溶けにくいので味を薄めず、素材の味を活かすことができます。

イベントで使われる氷彫刻は見て楽しめますし、氷柱宝探しでは触って冷たさを感じることができます。

ですがそういった体験を含めた氷の魅力はまだまだ消費者の方には伝わっていないのが現状です

正しく五感に訴えかける、そういった部分の魅力ですね

氷はご家庭でも作ることができますが、製氷工場の氷はもっとすごいぞ！　というのを私達、製氷業界がもっと発信していくことが求められていくと思うんです

知って貰うために、続けていくために何をするか、ってことですね

私個人としては、最終的に消費者の方々に純氷（製氷工場が作る氷）を使う文化が根付いて欲しいんですよね

良い氷と触れ合うことでしか得られないプレミアム感をもっと波及させたいということですね

そういうことです！

今回、こうして様々な魅力を教えていただいたおかげで、氷の消費者としてのリテラシーが一段レベルアップしたように思います！

ご案内した甲斐がありました(笑)

では、本当に最後に。池田さんにとって氷とは？

うーん、もはや自分を成長させてくれる相方ですかね

脇役から相方へ、エモーショナルでいい締めになりました。

今回、施設内を見学させていただきましたが私個人としては早く純氷と家庭で作った氷で飲み比べをしてみたいと思うくらいに氷に夢中になっています

是非、お家で飲み比べしてみてください。

あと、いつかは氷のビアジョッキも試してみてください

それは、もう本当に。

今日どうにかならないでしょうか、カメラマンさん！！

改めて、本日はありがとうございました！

少しでも氷の魅力が伝わるように記事にしてみます。

読者の皆さん、純氷使おう！

こちらこそ、ありがとうございました。

是非、今日の晩酌には純氷を！